ご主人のAさんは村山市にある有名なお蕎麦屋さんを仕事場としている。茅葺き屋根のその店舗建造物は江戸時代から続くという長い歴史を有するとても古いもので、その隣にあるやはり年季の入った建物をご実家として育ってきたというAさんがこの河北町でいざ自分の家づくりをするにあたり望んだことはたったひとつ。「あったかい家にしたい」ということだった。
「寒い環境で育ったからって寒さに強いわけじゃない。関係ないですよね。私はとても寒がりなので、福井建設さんにはとにかくあったくしてほしいとお願いしました」
他方、Aさんの奥さんは、千葉、埼玉、京都、東京と日本各地を転々とする家族のなかで育ってきたひとだった。山形にやって来たのは8年前のこと。それから間もなく結婚し、東根や寒河江でのアパート暮らしを経て、現在の暮らしに至っている。「いつか家を建てたいとは思っていました」という奥さんがこの家づくりに望んだことのひとつは「吹き抜けのある家にしたい」ということだった。
「転勤族でいろんな町に住みましたが、どこにいてもいつもマンション暮らしでしたから、一戸建ての広々とした家というものにずっと憧れていました。だからどうしても開放感のある吹き抜けにしたかったんです」
つまり、Aさんご夫婦それぞれの要望をシンプルに足し算してみれば「広々とした吹き抜けの空間がありつつ、厳しい冬もしっかり暖かな家」という家づくりのコンセプトが自ずからできあがることになる。そこで問題となるのは「果たしてそれは実現可能なことなのか」ということだ。
ご主人であるAさんは「吹き抜けがあるとなれば当然ながら空間そのものが大きなものになるし、どうしても暖気が上昇してしまい冷え冷えとした家になるのではないだろうか?」と不安だったという。しかし、奥さんはそれでもやはり「吹き抜けがいい」。そんなふたりが福井建設とともに出した答えは、床暖房、だった。
そもそもこの家が建っている河北町は、山形県のほぼ中央に位置し、寒河江、東根、天童、村山に隣接する町で、冬はごくふつうに1メートルほどの積雪量になるという雪の多い地域。そんな雪深いエリアに位置する場所でご家族が暮らし始めたのは、このインタビュー取材が行われる1年ほど前のこと。なので、Aさんご家族はすでにこの家でウィンターシーズンを1回経験し、これからまさに2回目を迎えようとしていたタイミングだったわけだが、Aさんご夫妻は「床暖房とエアコンだけで十分暖かいんです。この家に暮らして寒いと感じることは全然ないですね」と笑顔で語ってくれた。
キッチン周りにいても、洗面所にいても、リビングにいても、さらには2階にいても、床のタイルやパイン材を通して足の裏から暖かさをじんわりと感じることができ、冬なのに暖かいという体感をリアルに与えてくれる。吹き抜けのある気持ち良い空間と快適な暖かさをしっかりと両立させた、高性能の暮らしの姿がここにあった。
もちろん、この家にはその他にも、ご夫婦の様々な要望が様々なカタチとなって表現されている。
例えば収納。三角屋根の屋根裏スペースは収納庫となっているし、玄関入ってすぐのシューズクロークはオリジナルの造作物で収納スペースはかなり十分。さらにまた、キッチン背後のカップボードもやはりオリジナルの造作物で大容量スペースをばっちり確保している。パントリーも同様。これらはすべて「収納の充実した家にしたい」というAさんの奥さんの望みがカタチになったものと言えるだろう。おそらく福井建設のワークスのなかでもトップクラスの収納充実度ではないだろうか。しかもこれらは大工さんがその場の状況や空間に合わせて製作してくれているものなので、その家らしいテイストで、空間を一切無駄にすることなくジャストサイズで出来上がっているのもいい。
また、「回遊性の高いアイランドタイプのキッチン」は夫婦揃ってのご希望だ。奥さんだけでなくご主人もキッチンに立つことが大好きだというおふたりなので、大人ふたりでキッチンに立っても窮屈でないこと、子どもたちふたりが走り回れるくらいのスペースを創出すること、そして洗濯やお風呂やリビングなどどこへでもアクセスできる家事動線を確保すること、というご希望を満たした結果となっている。子どもたちはまさにその通りに、このインタビュー取材の間も、キッチン周りをはしゃいで走り回って、理想が叶えられていることを証明してくれていた。
吹き抜けの東側にある大きな窓から差し込む朝の陽射しも、家族みんなとても気に入っている。夜は夜で、ときおり綺麗なお月様がその窓から見えることもある。それを見る子供たちの嬉しがる顔がいいのだという。
そして最後に、2階へと上がるための階段に注目したい。リビングにあるごくふつうなものに見えるこの階段の配置には、実はこっそりと「親心」が隠されている。というのも、今はまだ4歳と2歳という無邪気な子どもたちも、やがては成長し、そしていつかきっと反抗期を迎えるときがくることだろう。そうなれば、玄関のドアを開けて帰宅しても親に顔も見せずにまっすぐ自分の部屋に直行しようとすることだろう。反抗期とはそういうものだ。だが、親の側からすればそれはちょっと寂しい。いくら反抗期になろうが思春期だろうが、子どもがどんな顔して帰ってきたのかを毎日しっかり見届けていたい。というわけで、子ども部屋に行くためには必ずリビングを通らざるを得ないような仕掛けにしたのだ、とAさんの奥さんは言う。この配置ならキッチンからでも必ず子どもの顔が見える、と。何気ないリビング階段のなかに、十年先の未来を予見し、親心を滲み込ませたというこのエピソードにこそ、Aさん夫妻の家づくりの「らしさ」が表現されているのかもしれない。
注文住宅の間取りや素材選び、外観デザイン、価格などのご相談を承ります。土地探しのお手伝いや注文住宅建築の流れのご説明をご希望の場合には、お問い合せの際にお知らせください。不動産会社やファイナンシャルプランナーと協力して、お客様にとって最適なプランをご提案いたします。
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